
DeepRoute.aiはこれまでもL4相当の自動運転スタックや都市型ロボタクシー運用で知られてきたが、ここにきてL2+〜L3クラスの高度ADAS領域においても、「VLAモデル」の商用展開を本格化させる方針を打ち出した。講演ではまず、現在のADASが抱える限界が列挙された。「ブラックボックスで理由が説明できない」「複雑な交通環境に弱い」「人との自然な対話ができない」といった課題に対し、VLAモデルは「視覚(Vision)」「言語(Language)」「行動(Action)」を統合することで、運転判断を“説明可能”にし、より直感的で信頼されるAI運転支援の基盤を築くという。
今回注目されたのは、DeepRoute.aiがこのVLAを汎用型モジュールとしてOEMに提供する意向を明確にした点だ。すでに東風や江淮(JAC) 、長城の高級ブランド「WEY」との実装テストも報告されており、一部の広汽系ブランドとは実証・供給レベルでの関係を築いている。2024年秋に発表された「Driver 3.0」は、VLA構造を段階的に組み込んだ次世代ADASスタックとして位置付けられている。
一方、VLAの先駆者として注目を集めているLiは、自社でフルスクラッチ開発したVLAを、2025年7月販売開始予定の初のSU BEV「i8」に搭載予定だ。Liはエヌビディアの最新SoC「Drive Thor-U」をいち早く採用し、車載LLMとの統合を通じて、運転支援だけでなく車内UX全体を“スマートAI OS”として再設計している。LiのVLAは、その設計思想から「深く」「重く」「自社完結」しており、限られたハイエンドモデルに焦点を当てている。
これに対し、DeepRoute.aiのVLAは「軽く」「柔軟に」「外販可能」である点が対照的だ。たとえばOrin-Xをベースに構成されるが、Thorを必須とはせず、ミッドレンジのSoCでも稼働するバージョンが開発されている。音声対話やChain of Thought(思考の連鎖)による推論過程の可視化といった高度な要素は、構成に応じて段階的に提供可能だ。これは、VLAというAI運転モデルの価値が、もはや“専有技術”ではなく、“共通基盤”として広がりつつあることを象徴している。Liは高い完成度と統合力でプレミアム市場を攻めるが、それ以外の数多くの中国系・新興OEMが、DeepRoute.aiのような外部ベンダーによるVLAソリューションに活路を見出す可能性は高い。
「VLAは未来のAIカーの共通言語となる」。そう語る周CEOの言葉は、まさに今、自動車産業の“思考様式”そのものが変わりつつあることを示唆している。自動運転が単なる制御技術から「意味を理解し、対話し、行動するAI」へと進化するこの転換点において、DeepRoute.aiは、その“翻訳者”としての役割を果たそうとしている。
中国の乗用車における自動運転分野において、Liのような独自開発同時展開型の他、ファーウェイのエコシステム展開型、Momentaのようなメーカーへの供給型と、大きく分けて3タイプ存在する。メーカーへの供給型では他に、地平線(Horizon Robotics)がVWや奇瑞(Chery)への供給を開始しようとしている。DeepRoute.aiもこのメーカーへの供給型でキャスティングボードを握れるかが注目される。
