
小米(Xiaomi)創業者でトップの雷軍氏は2025年5月10日、公式Weiboで、この1ヶ月余りが「Xiaomi創業以来、最も困難な時期だ」と述べた。背景には、この期間他の事業に特段の困難さがあった気配は見られず、自動車に限定される。雷氏の吐露を分析していくと、この1ヶ月のXiaomiが、スマホ・家電等メーカーから真の自動車メーカーになれるかどうかの瀬戸際であることが分かる。一体何があり、Xiaomiカーはどう向かおうとしているのか。
ここ最近、XiaomiSU7 Ultraのカーボンファイバー製デュアルエアチャネルフロントフードに関するトラブルが発覚。ユーザーは4万元(約80万円)以上高額な追加料金を支払ってこのパーツを選択したが、実際には公式説明とは異なり、性能向上効果が確認できないことが判明した。空力性能やブレーキ冷却サポートを謳っていたが、これらの機能を果たしておらず、「最も高価な装飾品」と揶揄される事態に。顧客の集団訴訟も始まり、Xiaomiは謝罪と補償案を提示したものの、ユーザーの信頼回復は道半ば。さらに、SU7 Ultraのシステムアップデートでは「レースモード」のアンロック条件が変更され、一部のユーザーに混乱を引き起こした。
しかし、何といっても重大だったのが、2025年3月末に発生した、自車による高速道路における若い女性3人の死亡事故だろう。運転手が運転支援を自動運転と過信して起こったとされるこの事故は、単にXiaomiに限らず、中国自動車業界において根本的な変革をもたらした。今まで散々連呼されてきた「スマートドライビング」は禁止ワードとなり、メーカー側は消費者に誤解を生ませないこと、消費者に教育を行うことが義務付けられていく方向だ。Xiaomi自身、自社のシステム名称を変更した。
雷氏の今回のWeibo投稿は、「2025年5月10日、土曜日。ジムで運動、2025年で42回目」から始まる。わざわざこれを記すほど、久びりのフィットネスだったことがうかがえる。「この1か月余りは、Xiaomi創業以来、最も困難な時期でした。感情的にも落ち込み、一部の会議の予定や出張計画をキャンセルし、しばらくの間、SNSでの交流も停止していました」とした。創業15年、スタートしたばかりの自動車はともかく、スマホや家電では中国および海外にも積極的に進出、拡大してきたトップの吐露としては異例だ。
重要なのは、雷軍が「Xiaomi創業以来」と表現した点である。これは単に自動車事業の危機に限らず、Xiaomiというブランド全体の信頼が揺らいでいるという意味を含んでいる。自動車事業の一連の問題は、スマホや家電で培った「高品質・低価格」のイメージにも影響を与えかねない。安全性と信頼性が最優先される自動車業界で、Xiaomiのブランド理念が通用するのかという根本的な問いが浮かび上がっている。
Xiaomiのスマホは、他社と同程度の確率で爆発事故を起こし、これまでにも中国内外で死者が出ることはあった。しかし、高速道路での死亡事故という、自動車メーカーとしては現状避けては通れないものに直面、その対応に追われたこの1ヶ月間。スマホとクルマの違い。そしてこうした事例は自動車メーカーとしては今後も背負っていかなければならない宿命、と悟った時、その苦しさが滲み出たような、雷氏の投稿と言える。しかもXiaomiは、良くも悪くも注目されるので、そのプレッシャーは想像を絶する。
Xiaomiは2024年に10万台以上の新車を販売し、2025年には35万台の販売目標を掲げている。この規模は、2023年の理想(Lixiang)と同程度のもので、一気に新興トップとの差を詰めつつある。第2モデル、初のSUVで今後の中核となる「YU7」の販売開始も間近に控えており、ブランドイメージの立て直しが急務だ。今回とは反対に、自車が絶賛されたり、自動車メーカーらしくリコールをしてきたXiaomiだが、まさに今、真の自動車メーカーとなれるかどうかの瀬戸際だと言える。
