吉利ZEEKRが米国での上場廃止へ、その戦略と背景、リスクは?
中国民間メーカー吉利(Geely)がNEVサブブランド「極氪(ZEEKR)」の私有化方針を発表した。全株式を取得して、完全子会社化にする予定。ZEEKRは、米国上場からわずか一年で上場廃止となることになった。この動きは、Geelyが推進する「一つのGeely」戦略の一環であり、グループ全体の事業再編成と効率化を目指すものだが、その背景には複雑な要因が絡んでいる。

まず、ZEEKRの米国上場後の株価はほとんど伸びていない。2024年5月にニューヨーク証券取引所での上場を果たしたZEEKRは、一時的に株価が上昇したものの、その後は横ばいが続き、2025年5月時点でも目立った成長を示していなかった。これは、ZEEKRが国際市場での認知度が低く、米国の投資家にとっては「無名の中国EVブランド」として認識され続けたことが一因である。販売も徐々にではあるが伸びてきているのに株価は低迷、では上場している意味がない。

さらに、米中の地政学的リスクもZEEKRの米国市場での存在感を弱めた。米国証券監督当局による中国企業への規制強化、米中対立の激化は、中国企業が米国市場で安定的に取引を行うことを難しくしている。Geelyはこうしたリスクを避けるため、ZEEKRの私有化を決断した可能性が高い。また、中国政府自身も近年、自国企業が香港市場で上場し、資本を集めることを推奨しており、これもZEEKRの私有化と香港上場再挑戦の布石と考えられる。

しかし、この動きはZEEKRにとってマイナス面も大きい。ZEEKRは他の中国EV企業と同様、海外進出を加速し、グローバルブランドとしての地位を確立しようとしていた。米国上場はその一環であり、米国市場でのプレゼンスはブランド力を高め、資金調達の手段を広げるための重要な足場であった。それを失うことは、ZEEKRが国際市場での認知度を高める機会を逃し、欧州や東南アジアなどの市場での展開に不利益になる可能性がある。

ZEEKRは日本進出も計画しているが、BYDの苦戦からも明らかなように、日本の消費者の中国自動車ブランドに対する忌避感は強い。ZEEKRはその中でも、米国上場ブランドを掲げて、日本市場に挑戦できる可能性もあったが、それも失われる。ただし、それを掲げても、日本での展開の成功可否はそもそもが不透明だが。

ZEEKRが今後、香港市場に依存することで、中国および香港に引きこもり、「ガラパゴス化」するリスクも無視できない。他の中国EVメーカー、たとえば蔚来(NIO)や小鵬(Xpeng)も香港市場での上場にシフトしており、国際市場での競争力を維持することが難しくなる可能性がある。特に、香港市場での資金調達に依存することで、中国資本に支配され、グローバルな視点での成長戦略が曖昧になる危険がある。

Geelyにとって今回の動きは、「一つのGeely」というブランド一体化戦略に沿ったものであり、グループの効率化を目指すもの。しかし、ZEEKRというプレミアムNEVブランドがその代償として国際的なプレゼンスを失うことは、長期的にはGeely全体のブランド価値にも影響を与える可能性がある。