広汽の伝祺がHI採用、初のファーウェイ乾崑ADS 4.0採用を発表
中国国有メーカー広汽集団のオリジナルブランド「伝祺(Trumpchi)」は2025年4月、上海モーターショーで、新型SUV「向往S9」と新型MPV「向往M8」を発表した。これらにはファーウェイの最新世代スマートドライビングシステム「乾崑ADS 4.0」と、HarmonyOSベースの次世代車載コックピット「Harmony Space 5」をフル搭載する。公式発表では明言されていないが、伝祺による実質的なHI(HUAWEI INSIDE)の採用で、乾崑ADS 4.0を採用する初のモデルとなる。これにより広汽は、ファーウェイの技術を使い倒す戦略を明確にした。

乾崑ADS 4.0は、従来のADS 3.0シリーズとは一線を画す技術革新を遂げている。192ラインの高精度LiDAR、高度4Dミリ波レーダーを組み合わせた新型センサー構成を採用し、都市部での高精度なマップレスNOA(ナビゲーション付き自動運転)走行を実現。エンドtoエンド型のディープラーニング技術により、車両が状況判断と行動決定を自律的に行う「AI型運転支援」へと進化している。これにより、ユーザーは高速道路だけでなく、複雑な都市部においても自然で安全な運転支援を享受できる。

広汽はこれにとどまらず、ファーウェイとの関係深化をさらに加速させている。すでに広汽は、単独出資で「華望」という企業を設立、ファーウェイとの協業深化を滲ませている。華はファーウェイの中国語名「華為」から、望はファーウェイのスマートドライビング子会社「引望」からと思われる。具体的にどのような取り組みになるかは不明だが、最低でも現在の「鴻蒙智行(HIMA)」の「界」シリーズと同等のものになるはず。

HIと「界」シリーズを同時に採用しているのは現状、やはり国有メーカーの北汽集団だけ。北汽集団も合弁相手のベンツ頼みという側面があるが、広汽も同じ。トヨタ、ホンダの「両田」合弁が広汽の主力だったが、それらの合弁は往時の勢いを失い、オリジナルブランド育成に注力しなければならない状況。そこで、伝祺のHI採用、「華望」の展開という二本立てで、ファーウェイの自動車技術を使い倒し、劣勢挽回を期す考えのようだ。

伝祺は25万元ぐらいまでのミニバンやSUVに強みがあり、ガソリン車や、トヨタ技術を生かしたHEVに強みがあった。しかし向往シリーズではSU PHEVをリリース、新エネルギー車(NEV)強化にも走っている。今回の向往S9でもファーウェイの他、寧徳時代(CATL)のPHEV/REEV専用バッテリーを採用していることをストロングポイントとして強調。「華望」は完全なNEVブランドとして、伝祺と差別化を図るためにも、25万元以上の高価格帯志向のハイテク・ラグジュアリー層をターゲットとする可能性がある。

今回の動きは、単なる1社の戦略変更にとどまらず、中国自動車産業全体の大きなトレンドを象徴している。すなわち、自動車メーカー各社が「独自開発主義」にこだわるのではなく、ファーウェイのような先進技術サプライヤーと連携・協業することで、短期間でスマートドライビングとコックピット体験のレベルを引き上げ、市場競争力を確保する流れである。当面は伝祺の実質的なHI採用が功を奏すかどうかが試金石になりそう。しかし、これが成功しようが失敗しようが、ファーウェイの中国自動車市場におけるプレゼンスはまだまだ高まることが予想される。