
上汽集団やアリババによる智己(IM)が先日、新たな車載AIシステム「IM AIOS」を発表した。中国EV業界では、音声アシスタントや高度なインフォテインメントシステムを実現しているが、それとは一線を画す。自動車とAIと言えば、中国では現在、スマートドライブ一色だが、今回はAI×スマートコックピットという点でも特徴的。IM AIOSでは、「No Touch & No App」コンセプトを打ち出し、タッチスクリーンや専用アプリを不要とし、完全に音声とAIによる対話のみで車内環境をコントロールできる。販売は苦戦が続いており、独自色を出した今回のIM AIOSが挽回の糸口になることは難しいような気もするが、その内容を紹介する。
IM AIOSは、業界初の完全AIベースの車載インターフェースを実現しようとしている。その特徴は、運転中の操作をすべて音声とAIエージェントで完結させることにある。従来の車載システムは、タッチスクリーンを介した操作が中心であり、音声コマンドは補助的な役割を果たしていた。しかし、IM AIOSはこれを根本から変える。本システムは、アリババのAI技術「通義千問 QwQ-32B」を活用し、業界トップレベルの自然言語処理能力を備えている。
これにより、ユーザーは簡単な音声コマンドを発するだけで、車両の各種機能を操作できる。例えば、エアコンの調整、ナビゲーション設定、音楽の再生、さらには食事の注文まで、すべてが「手を触れずに」完結する。IM Motorsは、この音声AI技術の精度が業界最高水準に達していると強調しており、車内における会話の自然さがこれまでの車載アシスタントとは一線を画すもの。
加えて、IM AIOSは単なる音声アシスタントではなく、「AIエージェント」 という概念を採用している。これは、複数のAIが協調しながら、ユーザーの要求をシームレスに処理する仕組みである。例えば、運転中に「お腹が空いた」と言えば、AIエージェントが最適なレストランを提案し、ナビゲーションを設定し、必要ならデリバリーを手配する。また、映画を見たいと言えば、車内スクリーンに最適なコンテンツを表示し、支払いまで自動で処理する。このように、IM AIOSは単なるコマンドベースのアシスタントではなく、「考えて先回りするAI」として設計されている。
IM Motorsは、アリババとの深い提携を活かし、IM AIOSを中国のローカルサービスとシームレスに統合している。特に注目すべきは、「AIレストラン予約」と「AIデリバリー」の導入である。これは、アリババ傘下のフードデリバリーサービス「餓了麼(Ele.me)」と統合され、運転中でも食事の注文がスムーズに行える仕組みだ。例えば、通勤途中で「コーヒーを注文したい」と言えば、AIエージェントがユーザーの好みを把握、適切なカフェを提案。タッチ操作なしに、音声のみで決済を完了し、指定した時間に受け取ることができる。また、「AIデリバリー」機能では、車の到着時間を予測し、食事を自動で注文、ピックアップ時間に合わせて受け取りが可能になる。
これらの機能は、蔚来(NIO)の車載AIアシスタント「NOMI」とは異なり、運転体験そのものを変えるというよりも、移動中の「生活の質」を向上させることに重点を置いている。IMは2024年4月に新型EV「IM L6」を発表予定であり、この車両が業界初の「AIデリバリー」対応車となる。すなわち、「移動するスマートリビング」としての役割を果たし、IM AIOSを最大限に活用した次世代のコックピット体験を提供することになる。
