
これもやはり米テスラ由来だが、現在中国では、自動車メーカーによるヒューマノイドロボット市場参入の動きが加速している。空飛ぶクルマにも熱心な中国新興メーカー小鵬(Xpeng)が好例だが、他にもBYD、広汽集団、長安集団などが構想を発表している。背景には、中国で急速に進むスマートドライブの技術を応用できること、価格競争が激しい自動車では利益が出なくなってきていることがあるようだ。0→1はテスラに任せて、1→100は中国勢が、という構造がここでも現れようとしている。ただし、それも結局将来的には価格競争が激しくなり、収益源とはならなくなることもすでに予想できる。
ヒューマノイドロボットは、自動車製造、医療、IoTなど、さまざまな分野で活用が期待されている。例えば、Xpengが2024年に発表したAIヒューマノイドロボット「Iron」 は、同社の広州工場で「P7+」の製造訓練にすでに導入されており、将来的には工場や販売店舗での活用が計画されている。従来の産業用ロボットは、溶接などの単純な作業に限定されていたが、ヒューマノイドロボットは人間に近い思考、コミュニケーション、実践能力を持ち、自由に歩行できる点が特長。
これにより、ネジ締め、品質検査、部品の運搬、受付業務などを担当し、年間を通じて休むことなく稼働できるため、大幅なコスト削減が可能になる。業界専門家の予測によると、ヒューマノイドロボットは次のテクノロジー革命を牽引する可能性があるという。2024年の中国ヒューマノイドロボット市場規模は約22億元(約450億円)と試算されており、2030年にはこれが10倍以上の370億元(約7600億円)に達する見込みである。販売台数は4000台から27万台へと急増すると予測されている。
この新たな兆候を捉え、多くの自動車メーカーが参入を決めているのには、明確な技術的な優位性がある。AIアルゴリズム、センサー技術(カメラ、ミリ波レーダー、LiDAR、超音波レーダー、チップ)などのコア技術は、スマートドライブ、つまり自動運転とヒューマノイドロボットの両方に共通して活用できる。「自動車メーカーの発想は、成熟した産業チェーンを活用し、ヒューマノイドロボットの価格を急速に引き下げることにある」 と分析する専門家もいる。
自動車メーカーがヒューマノイドロボット市場に参入するもう一つの大きな理由は、「第二の成長エンジン」を確保するためである。中国市場における競争が激化する中で、新車販売だけでは利益を維持できなくなりつつある。2024年1-11月の中国自動車業界全体の利益は前年比7.3%減少し、利益率はわずか4.4%で、製造業平均6.1%を下回る。この現象は、当然価格競争の結果で、中国の新エネルギー車(NEV)価格は期間中だけで平均1.8万元(約36万円)値下げ、値下げ率は9.2%に達している。
この状況に対処するため、今の中国自動車業界は中国勢はもとより、外資合弁、さらに新興も含め、どこもかしこも自動車輸出だ。しかし世界の自動車ニーズにも限りがある以上、そればっかりに頼っているわけにはいかない。そこで注目されているのがヒューマノイドロボットの新事業化であり、新たな収益源として樹立すること。AI企業をすでに自称するXpengは、AI技術を自動車のみならず、ロボットにも応用することで、この相互活用によるAIのさらなる進化の加速を目指している。
0→1はあまりない中国だが、1→100が得意なのが中国。その背景には、膨大な人口に支えられた巨大市場、そして大量生産による世界的に信じられない低コスト化だ。NEVが完全にそれを体現しているが、それと同様、ヒューマノイドロボット市場も最初は高収益であっても、やがて価格競争に陥り、利益率が低下するリスクが考えられる。2030年ごろまでは自動車×ヒューマノイドロボットが話題になりそうだが、それ以降はさらに次世代技術が必要になってくる可能性がある。テスラ、というよりはイーロン・マスク氏はすでにその方向で動いており、マスク氏が進める脳とコンピューターを直接接続し、思考でデバイスを操作するブレイン・マシン・インターフェース(BMI)のNeuralink、次世代移動手段として期待されている超音速輸送のHyperloop等が今後、中国の自動車業界でも注目を集める可能性がある。
