
中国新興メーカー蔚来(NIO)の沈斐副総裁は先日、「上海のバッテリースワップステーションでは1日あたり9000回の交換が行われており、まもなく1万回に達する。損益分岐点に非常に近づいている」と語った。世界的にも例がない、ここまで大規模な乗用車バッテリー交換の黒字化が近づいている-最初この話を聞いた時、上海に限定している点で何やら怪しさを感じていた。今回中国現地メディアがこれに関連して、上海のNIO交換ステーションを実際に訪問、状況を調査した。それによれば、やはりまだまだNIOバッテリー交換の黒字化は遠そうだ。
テスラを代表とする「スーパーチャージ」など、急速充電から超急速充電への移行は中国でも進んでいる。充電量80%まで数分で可能、という車両や充電器が開発され、実際に運用が始まっている。しかしその車両や充電器の普及度合いから考えて、EVの充電にはやはりどう短く見積もっても10~20分かかるのが現状。バッテリー交換であれば理論上数分でフル充電のバッテリーパックに交換でき、ガソリン車のガソリンスタンド所要時間と比べても、大幅に下回っている。
NIOの発表によれば、バッテリー交換ビジネスが現時点で黒字化するには、1つのステーションで1日60~70回バッテリー交換が行われる必要があるという。しかしNIOが発表しているデータによれば、最新状況で1つのステーションでの平均バッテリー交換回数は28回であり、NIO目標の半分に満たない。
中国現地記者が訪れたNIOのバッテリー交換ステーションは上海でも最も使用されているものだという。そこでは1日平均300回のバッテリーパックの交換が行われ、全国平均の10倍。このステーション単体だけで見れば、余裕で黒字化していると考えられる。記者が訪れた昼間、NIO車がひっきりなしにやってきて、バッテリー交換をして再出発していたという。確認したところ、滞在1時間で8台が交換、最大で4台が交換待ちにより停車していて、実質的な渋滞が発生していた、とも。
NIOのバッテリーサブスクBaaSではない、バッテリー交換サービスは現在、電気代とサービス料が時間帯によって激しく変動するシステムが取られている。簡単に言えば、朝晩はそれらが高く、昼間は安い。NIOユーザーによれば、朝晩と昼間の価格差は20元(約400円)程度になるという。時間があれば昼間に交換する、と、そのユーザーも明言している。NIOオーナーほどの富裕層でもこの程度の価格差を気にする、というのも何とも中国らしい。
一方、別の上海市内のバッテリー交換ステーションを訪問したところ、そこでは1時間で2台しか交換しに来なかった、という。ラグジュアリーNIOで、すでにPHEV/REEVがNEVとは認められずBEV天国かつ富裕の上海市でもこの状態であれば、他のエリアのバッテリー交換ステーションはなおさらそこまで使われていないと予想できる。
こういう状況においてNIOは、中国全ての市町村にバッテリー交換ステーションを設置すると宣言している。別の低価格ブランド「楽道(ONVO)」「蛍」の展開を急いでいる、とは言うものの、上海市でも使用状況が両極化しているステーションを中国全ての市町村カバーに振り向けているのはやはりおかしい。やるべきは、上海市内だけでも、とりあえずステーション配置の最適化を図ること。そもそも「充電渋滞がない」を大きく喧伝しているNIOのバッテリー交換ソリューションで、交換渋滞が起きている状態こそが問題だ。もちろん言われるまでもなく、中国全ての市町村カバーと同時進行で行われているかもしれないが。
