
米フォードの中国子会社、フォード中国がいつの間にか復活、好調な業績を上げている。2024年のフォード中国の最終利益は44億元(約880億円)に達したという。以前までの数年間で蓄えられた膨大な累損の解消にはまだ及ばないものの、確実に成長軌道に乗った。中国で最も早くからオワコン外資化していたが、一体何があったのか。そしてそれは、今苦境にある日系に何か示唆になるものがあるのか?
長安汽車との合弁である長安フォード、長安リンカーン、江鈴汽車(JMC)との合弁である江鈴フォードという構成のフォード中国。販売のピークは2016年で、当時の年間販売台数は120万台を超えていた。しかし2018年になると100万台を割り、基本的には右肩下がりになり、2022年の販売台数は前年比33.5%減の49.6万台、年間損失は84億元(約1680億円)に達した。
このどん底を回復させたのが、中国人経営者、呉勝波氏だ。主に外資系メーカーに長く務めてきた同氏は2022年、フォード上層部に「中国撤退は絶対にない」という確約を得た上で、フォード中国No.2の総経理に就任。その後すぐにフォード中国CEOというNo.1に昇進、2023年第3四半期(7-9月)には四半期ベースでの黒字転換を実現した。そして2024年には年間ベースで7年ぶりとなる黒字転換を成し遂げた。今や同氏は中国のみならず、フォードの東南アジア、南アフリカ、オーストラリア、中東などの海外市場も統括する立場に昇進した。
同氏のフォード改革とはどのようなものだったのか? それはもうずばり「価格競争から脱却し、高級市場へシフト」だ。今の販売台数至上主義の中国では考えられない方向転換だが、同氏がこれを強行したことにより、フォードは再生した。具体的には、フォードを「ハード&パフォーマンス」ブランドとして、リンカーンを「ラグジュアリー」ブランドとして、それぞれ確立してブランド戦略を再構築。低利益の小型車を廃止し、高利益の大型車に集中し、生産能力の低い工場を統合・閉鎖してコスト削減を進めた。
中国現地の空気上、新エネルギー車(NEV)にも力を入れなければならない。長安フォードと長安汽車は合弁のNEV会社を設立させたが、これは若干おかしい。普通であれば、フォード中国と長安汽車の合弁になるはずだ。その結果、この新会社は長安汽車が70%株式を持ち、フォード側は少ない出資比率になっている。しかし、おそらくこれも同氏の戦略で、NEVをやらないわけにはいかないが、あまり利益の上がらないNEVにそこまで注力するつもりはない、という表れかもしれない。また、長安汽車主導にしたほうが、中国現地NEVサプライチェーンとの連係も取りやすく、効率が高いことも間違いない。
NEVにも独特の布石を打ちながら、やはり収益に貢献したのは中国からの輸出だ。フォード中国の輸出台数は2023年に10万台を突破して、過去最高となった。その上でさらに2024年1-6月には輸出台数が前年比45%増の7.5万台となった。中東、東南アジア、南米市場へ積極展開しており、現在ではこれらの市場におけるフォードの事業も同氏が統括している。ブランド再構築、ラインナップの大幅見直し、コストカット、NEVへの布石、輸出、これらを組み合わせて、フォード中国は販売台数こそ伸びていないどころかマイナスになっている面もあるが、確実に利益を創出できる体制に生まれ変わった。
ここまでの短期間によるドラスティックな改革、その成功例は中国でも少ない。呉勝波氏の矢継ぎ早の昇進は、フォード全体におけるフォード中国の重要性と比例している。外資も中国からの撤退を決断する前に、何かやることがあるのではないか、と思わせる、サクセスストーリーになっている。
