
広汽フィアット・クライスラーの破産管理人は2025年1月25日、その最重要資産の一つ「長沙工場」が、オークションにかけても入札者が現れず、再び不成立になったことを明らかにした。これで同工場のオークションは5回目の不成立となった。要はもう売れない状態であり、同社破産管理人の苦悩は深まる。一つには景気後退の影響があり、投資家がみな慎重になっていること、もう一つは資産の生産設備などが今から見れば型落ちで現状に対応できないなどの可能性が考えられる。撤退する外資合弁が中国に不良債権を残す典型例になっており、今後も撤退する外資合弁がありそうな中で、注目に値する事例だ。
広汽三菱と同じように、広汽フィアット・クライスラーも2022年には撤退、同年10月から破産清算手続きが開始。同年11月にはその手続きが正式に実施となった。広汽フィアット・クライスラーは広州にも工場があったが、その工場は広汽埃安(AION)が引き継ぎ、EV生産拠点として改装されている。広汽三菱にも長沙工場があったが、これも広汽集団が主にAIONのための生産能力増強のために接収した。では、広汽フィアット・クライスラーの長沙工場も広汽集団が買収すればよいのでは?と考えられるが、そうはなっていない。
オークション対象資産は、湖南省長沙市において、広汽フィアット・クライスラーが保有している土地、建物、工場の生産設備、知的財産などが含まれる。景気が良ければ、一か八かの博打的投資好きが多い、中国の投資家が手を挙げる可能性もあるが、5回やってそれさえも現れない、というのは、よほど景気後退が深刻な可能性もある。破産管理人は、長沙経済技術開発区管理委員会と複数の潜在投資家との交渉を進め、尽力したにもかかわらず、明確な投資意向には至らなかったとしている。
今回、広汽集団が渋っているように見えるのは、三菱もそうだが、フィアット・クライスラーの撤退でも、すでに相応の損失を出していること。さらに、AIONが往年の勢いを足元は失っており、準備した生産能力が過剰になる可能性があることがありそうだ。広汽集団は黒字確保すれすれの経営を行っており、ここでリスクをとることは、国有企業としての資産目減りにつながりかねない。
また、今の中国で生産能力を高めたい、という自動車メーカーはごく少数だ。想定できるものとしては、小米(シャオミ)、理想(Lixiang)、ファーウェイ関連ぐらいか。しかしいずれも長沙にゆかりは大きくはなさそうで、まず地の利がない。その上で、いずれも最先端設備を整えた工場を稼働させており、フィアット・クライスラー時代の設備を必要としているとは考えられない。彼らがもし生産能力を高めたいと思えば、自前で新設するだろう。
地の利だけで言えば、長沙となると、目立ったところでは広汽集団ぐらいしかない。広汽集団もファーウェイとの協業を進めているが、それがもし仮に大ヒットすれば、広汽フィアット・クライスラー長沙工場の接収という動きにはなるかもしれない。
広汽フィアット・クライスラーはこの長沙工場で、累計77万台の自動車を生産してきた。この中で今も現役で動いているものがどれぐらいあるかは不明だ。しかし広汽フィアット・クライスラー及び関連サプライヤーの生産停止に伴い、部品供給不足が深刻化している。長沙工場が売却できなければ、オーナーのアフターサービスを支える資金もおぼつかなくなる。同社破産管理人は「現在、アフターサービス提供主体と協議を進めており、サービス契約や費用に関する詳細な検討が続いている」としている。全く不透明で、現時点ではどうにもならない状況のようだ。
